パンはなくとも薔薇を求める

お金がないけど豊かな暮らし

月家賃込み12万で暮らせるようになれれば正社員にこだわらずともよくなるって話(願望)

自他ともに認める浪費家、物欲魔人だったよるなのですが、最近諸々あって生活水準を落とすことになりました。

 

具体的には、来月から「風呂まわり」「部屋の広さ」「収納の大きさ」がワンランクどころか大分ダウングレードされることになりまして。

 

まずお風呂について。

・追い焚きもできる

・もちろん自動でお湯はり

・湯船が広くて足をのばしてゆっくりできる

・洗い場も十分な広さ
・サーモ栓

という申し分のない環境でほぼ毎日湯船につかっていたのですが。

 

今後

・体育座りじゃないと入れないような狭い湯船

・そもそも自動でお湯がたまるのか不明(お湯はりモードみたいなのがヒートパネルには書いてあったけどどうつかうのかしらん...)

・混合栓(一応ヒートパネルがあるので温度調節は必要ないはず)

・洗い場は立ってギリギリくらい

になりました。

 

ちょっと、以前と同様に湯船につかってリラックスするのは難しそうなのと、そもそも掃除用具はどこにおけばよいのでしょう...。

 

 

そして部屋の広さについて

・居室8平米、キッチン2平米ほど

・それとはべつに廊下玄関浴室トイレのスペース

・同居人の部屋7平米

だったところを

 

今後

・全部込みワンルーム18平米(居室は5~6平米くらいかな)

です。

 

居室も今使っている幅140のPCデスクとゲーミング椅子を置いて収納を置いたらほぼ余裕がないです。

ということでベッドは捨てることになり、マットレスを上げ下げする生活が始まることになりました。

 

収納についても、クローゼットは今まで通りですが、ほかにはほぼナシです。

洗面所まわりに置いていた身だしなみケア用品や掃除用具はどこに置けばいいのでしょうか。掃除はしたいのですが...。居室に置くのですかね。

 

...というわけで、ちょっと「普通の生活」はそもそもできない感じです。(普通の基準が高かったらすみません、地方のドのつく田舎の出身なので許してほしいです...)

 

ちょっと(というかかなり)家の生活水準が下がると思うと、ほかもどんどん諦めがついてきました。

これは私の欠点である白黒思考のせいもあるかもしれないのですが、一度なにかを諦めるとスルスルと諦めがつくものですね。

 

以前は「ほしいものを全て諦めない、それで全てが崩壊しても...」という気持ちだったのが、なんだか今は、エアコン使わなければ3000円月に浮くのかー、とか、食費は自炊すれば3万で抑えられるな、とか、リアルで人と会うのは映画見るのに誘うとかはするけど、3000円以上の交際費をかけて行く食事などは行かなくてよいな、とか考えるようになっています。

実際、元々美容院は行かないし、服もほとんどお下がりを利用していて購入しないので、そのあたりを抑えられれば本当にほぼお金を使わない生活にできそうです(本は図書館、映画はサブスクと、安い日に徒歩で映画館にいっています)

 

最終目標としては、家賃込み12万まで生活費を落としたい。

このくらいで生活できるようになれば、生活保護にもシフトできるし、ゆるくバイトで暮らすこともできるし、今の仕事を(できればやめたいけど)続けるのであれば、なんと、貯金ができます!!(貯金というか、つみたてNISAですね)

 

今はまだ変動費7万+水道光熱費2万+家賃8万(同居人と折半しているので半額です)で17万生活にかかっているのですが、ここから5万下げられればいいわけですから。

 

もちろん、次の家(家賃9万)ではその実現は難しいので、とりあえず目下のところ、水道光熱費マイナス1万、変動費マイナス2万を目指しています。

 

2年後には家賃をもっと下げて込み6万程度に抑えられれば、実現も不可能ではないのでは...!?

図書館と映画館が近くにあれば、正直居住地はどこでもよいので...、引きこもりですし。

 

労働をやめるのも不可能ではないかもしれない、と気がついたら胸の苦しみがすこし晴れてきました。

 

 

 

 

さようならアルルカン/白い少女たちー氷室冴子初期作品集ー

 

コバルト文庫で辿る少女小説変遷史」内の「さようならアルルカン」についての記述に興味を持ったことをきっかけに、氷室冴子さんの「初期作品集」を読んだ。

あとから知ったのだが彼女も私と同じ北海道出身ということで、私は札幌人ではないのだがそれにしてもなんとなく親近感。実際、札幌の女子校を舞台にした作品もちらほら。

 

以下、それぞれの短編について。

 

「さようならアルルカン

コバルト文庫で辿る少女小説変遷史」で「少女たちのナイーブな関係性や感情、張りつめた自意識や孤独を硬質な文体で綴った作品」と作品が紹介されていたことをきっかけにこの本を手にとった。

「硬質な文体」というのが具体的に何をさすのかわからなかったので「いっそ本文を読んで納得しよう」と思ったことが一つ、それはそうと「硬質な」という表現と私が氷室冴子さんに持っていた印象がどうもそぐわなかったことを不思議に感じたことが一つ。というのも、私はそれまで彼女の作品は「なんて素敵にジャパネスク」しか読んだことがなく、こちらは口語調のくだけた雰囲気という印象が強かったからだ。

そしてなによりも、「少女たちのナイーブな関係性や感情、孤独」を描いているということが後押しになった。私はもう少女とは呼べないだろう年齢になった今でも、このような感覚を描いたものに共感するし、こういったものごとを描いた作品にぜひともこれからも出会いつづけたいからだ。

 

書き出しはこうである。

なぜ彼女を追うのだろうか。
この自問に答えるのは容易ではない。
違う高校に別れ別れになってから二年。すでに彼女は過去の人であるはずなのに、しかし確かに現在の私とどこかで結びついているような気がする。そのせいかもしれない。

なるほど「硬質な文体」というのはこういうことかと思った(違ったらゴメンナサイ)。

「自問」「容易」といった漢語ベースのワードが使われている。漢語ベースだと、柔らかいというよりは、硬い印象になる。

この小説は一人称であるので、語り手は大人びた、どちらかというと理知的で賢いタイプの女性なのかと想像できる。

実際、「彼女」柳沢真琴のほうが早熟で語り手の一歩先を行っているとはいえ、語り手の少女も高校二年で「銀の匙」や「知と愛」などを読み、読書仲間と語り合うといういかにも知的な生活を送っている。(私なんて、25になるまで「銀の匙」なんて存在自体知らなかった...)

 

この「さようならアルルカン」では、語り手の「私」、柳沢真琴、そして読書仲間の緒美という、それぞれ周囲とはちがった感性をもっていて早熟で、自分の世界をだいじにするからこそ「仮面」を被り、道化のようにいつわりの自分を演じて生活せざるを得なかった3人のそれぞれの成長と友情を築く過程が描かれている。

「仮面」については「薔薇」と「虞美人草」という二つの型が提示される。

「そういうあなたは?あなたもなかなかの曲者じゃなかったの。聞き違いでなければ、あなたはさっき「きみも仮面の人生を送ってきた」云々といったけど、もという副助詞は意味深長だ」
「ぼくは昔、薔薇でした」
緒美はすましてそういった。その奇妙な答えに、私は噴き出した。
緒美はけっして美少年ではない。ごく普通の、少々おとなびた顔つきで見栄えがする、という程度の高校生である。いわば、むくつけき男の子である彼が、「ぼくは昔、薔薇でした」などといえば、噴き出したくなるのも当然だった。
(中略)
「薔薇とは、なるほどな表現ね。強いがくに花首を守られて頭を上げ、棘をもって手折ろうとする者の手を傷つけてきたのね」
(中略)
「あなたが薔薇なら私は何かしら」
「ぼくはそんあに植物名を知らないんだ。風の吹くままに揺れて、いつも頭を下げている花...虞美人草かな」
「な...る。細いくきには無数の柔らかな棘があるしね。......ふむ......なんかいやに優雅ね。薔薇とか虞美人草とか」
私はなにげなくいった。
「そうだなあ。しかし優雅ってのは反面もろいもんだろう。ふたりの間には、明白な類似点が見られるな、うん」

「優雅ってのは反面もろいもんだろう」という緒美の言葉がささる。そう、もろい自分をまもるためにつけた仮面が、さらに傷を招いてしまうこともある...。

 

なんであろう私自身も、学生時代は「仮面」で生活していたものの一人だ。柳沢らほど早熟ではなかったので該当する時代は大学時代だけれど。高校までにありのままの自分で生活してきた結果、周囲から遠巻きにされたり、陰口をいわれたりといった生活に疲れはててしまい、大学では同じように疲れ、傷つきたくはないと、「虞美人草」として生きることを選んだ。

結果は芳しいとはいえない。高校時代孤独をわかちあっていた友人とは(そのせいだけ、ということもないが)疎遠になってしまったし、「都合のいい女性」を搾取しようとする悪い人もたくさん寄ってきたし、本来はもっと得られたはずの多くのきっかけも失ってしまったように思う。仮面をはがせたのは、私のことを理解しようとしてくれ歩みよってくれたパートナーや友人といった周囲の人々のおかげだ。今も、彼らと良好な関係を築きながら、同時に世界と良好な関係を築きつづけることへの模索を続けている。

 

作中では、柳沢と緒美は絵の世界をみつけ、内面との折り合いをつけながら世界とのつながりも保つ形で成長していく。語り手はおそらくのちに小説をかきはじめるだろう。そして私はこのように、世界の片隅で本や映画との対話を続けながら一歩一歩進んでいる。

 

 

「あなたへの挽歌」

こちらもまた、知的で早熟な女生徒が語り手である。「私」の、「都落ち」してきた新人教師への期待と失望。

 

こちらも「少女的」な感性をとてもよく捉えた作品である。

少女的、というと曖昧な表現だが、私はこれを読んで「少女らしい潔癖さ」といわれるものの正体を知った。そしてそれはたしかに私も持っているものであった。

語り手、そして「少女」にとって重要なのは、他人の目を気にせず、こびへつらわず、ただただ自分の信念や理想に率直であること。プライドをもつこと。孤独をおそれないこと。

作中では、「王者のしたたかさと少年の純粋さ」、「自分の力を疑うことなく信じている幼い少年の無垢さ、傲慢さ」「少年のように純粋に。少年のように傲慢に」「ほか を寄せつけなかった朗らかな自負心」「自ら孤独を望み、密かに野心をもやす皇子」などと表現されている。

それらを失い、有象無象との馴れ合いに、単純な幸福に満足してしまうような人では、少女のお相手にはふさわしくないのだ。

 

...それにしても、17歳にして「この歳にもなったら、好きな詩人の一人や二人くらいいる」というのはすごいですね。私は未だに詩はほとんどわからないです...。

 

 

「おしゃべり」

こちらは、前二作とはちょっとちがった主人公像がとられている。内向的でインテリタイプというよりは、容姿がよく明るく学校の人気者であるタイプだ。しかし、文体はどちらかというと硬いままなので多少、人物像との乖離の違和感がある。

ピリリと効いたオチが秀逸。海外の皮肉っぽいショートショートを読んだような読後感で、個人的には好きなタイプだった。

 

 

「悲しみ・つづれ織り」

幼馴染の男の子への失恋のお話。しかも恋敵は同じく幼馴染の女の子ということで、なかなか複雑...。

 

「です、ます」体が採用されていたりと、ちょっと雰囲気がここまでの作品とはちがっている印象。

内容というよりは、ところどころに出てくるキラーフレーズの数々に心を打たれた。

好きな男の子の家で彼のお気にいりのレコードを聞きながらのこの会話。

ーー知ってる?マルセル・ムルージって小説も書いてるらしいんだ。唯、読書好きだろ。知ってる?
ーー知らないわよ、そんなの。私、少年少女世界の名作全集オンリーだもの。

「私、少年少女世界の名作全集オンリーだもの」。なにこれ、ほんとクール。

そして、ずっと事実上恋人であったはずの少年への失恋を知った語り手のこの言葉。

私と湖の間には、友情以外の何もなかったのを、何かあるように、ふたりがふたりとも誤解していたにすぎないのだから。

そして、気持ちがぐしゃぐしゃで日記を書きながら、むしろ心が荒れてしまう語り手のこのシーン。

悪い人たちじゃないのだ。私も冷静にならなくては......
耐えられず、私は鉛筆を握りしめ、故意に芯を折りました。
いま書いた日記の部分を破り取り、くしゃくしゃにして、大きなモーションでくずかごに投げ入れました。
理性では、すべてが理路整然と処理できます。日記には、どんなことでも綴れます。けれどそれがなんの役に立つでしょう。私はいま、こんなにも悲しい。

感情に飲みこまれているように一見思えるのだけど、「故意に」芯を折ったという描写が鋭く効いている。100%感情に支配されているのではなく、どこかで冷静に見ている「私」もいる、という状態の端的な表現。

 

 

「私と彼女」

こちらはコメディで、この作品集では異色の作風。

ひょんなことから年下の女の子と「同棲」することになる女性主人公の日常が切りとられている。

 

そうね...、コメディやお笑いって、どうしても時代性をぬぐい切れないところがある。それが良い意味での時代性ならよいのだけど、今見るとどうしても「偏見」だなあと思ってしまう箇所がちらほら。この作品についていえば、同性愛に対してキモがったり、茶化したりしている部分がどうしても受けつけなかった。

ただ、やはりストーリーテリングが上手いので、それでも最後までおおむね楽しく読めたのは事実。

ここまでの作品がもう少し「文学」寄りだったので、こういったエンタメ要素の強い作品も高い水準で書けることに才能を感じる。

 

 

「白い少女たち」

こちらは文学に多少戻りつつ、ドラマ性、エンタメ性もふんだんに入れ込んだ作品。私の中では「氷点」と近いカテゴリに入った。

この「白い少女たち」は、「さようならアルルカン」とならんで表題作ということも納得の定評のある作品であるが、個人的には、上記したように似たような味の作品は氷室作品でなくても読めること、そして私があまりストレートなシリアスと言えばいいのか、「ドラマティックな重い・悲劇的な過去」設定を付与すること、そこから生きることや死ぬことに迫っていく、という方向性が好みではないのであまり気にいらなかったと言ってよい。

 

しかし、「寄宿舎もの」としてのこの作品に関してはそのジャンルが好きな自分としては素晴しいと感じたことは否定できない。

「鬼の舎長・ジュダ」というキャラクターだとか、容姿端麗・頭脳明晰・全校生徒に慕われる完璧な同室の子、だとか、なんだかよくある男子寄宿舎ものを女子でやったような雰囲気。そう、たとえるなら「トーマの心臓」の女子版だ。

もちろん男子の寄宿舎ものも最高なのだけど、やはり私も女性であるので、「これを全員女性で見たい!!」と思うことはしばしば。

たとえば女子の寄宿舎もので有名で私も読んだことのある作品では「マリア様がみてる」などがあるが、これは「女子特有の」文化になってしまっている点で、多少ずれている。男子でもやっていることをそのまま女子にスライドさせたものが、見たいのだ!!

この作品は、上記のような私の欲望を十二分に充たしてくれた。

読んでくださった方で、ほかにも同じような「女子寄宿舎もの」作品を知っているよ、という方が居ればぜひ教えてくださいな。

 

 

全体として見ると、「さようならアルルカン」「あなたへの挽歌」がこの作品集で気に入ったツー・トップ。

ほかの氷室冴子作品を読んでいくというのもよいのだけど、「ざ・ちぇんじ!」以降はコメディちっくな一人語りもの、になっていく印象があるので、私の好きな傾向とはずれるかな。「さようならアルルカン」「あなたへの挽歌」は伝統的な少女小説の流れを正統派として汲んでいる作品たちだと「花物語」をすでに読んでいる私としては考えているので、次に読む作品としては「乙女の港」を選ぼうか、と画策している。

 

言及した作品たち

 

 

 

 

 

 

 

 

2022年に読んだ本ベスト10

(順不同...というか読んだ順)

 

1. フラニーとズーイ

村上春樹の文体のおかげなのか、最初はフーンこんなかんじねー、はいはい、という感

じで読み進めているうちに沼にハマッているような感じ。読み終わったときには「これ...めちゃ良かったな...」と思えていた。

岡崎京子さん、「うたかたの日々」を漫画化していたけどこの作品もそれこそ彼女が漫画版やるとハマりそうな雰囲気がある。

 

 

2. テヘランでロリータを読む

和訳はこれまで単行本のみで入手困難だったこともあり英語版を買ってちまちま読んでいた本。満を持して手にとりやすい文庫本で登場したのをラッキーに邦訳を一気読み。(英語だと読めるっちゃ読めるけどやっぱり細かいニュアンスが拾えないしめちゃくちゃ時間がかかるので亀のような歩みでした...)

もともとはブックガイドとして、面白い本と解釈を探すつもりで読んでいたのだけど、ある本と自分の体験とを結び、しっかり自分のものとしていることに心をうたれた。私もそのように(この平和で脅威の少ない社会にいる自分が「彼女たちのように」というのは抵抗があるが)、こうやって読んでいく本たちを自分の血肉としていければよいなと思う。

 

また、私もずっと悩んでいたこと。主題やそこに書かれている内容をひどく嫌悪しつつも、その本はどうしようもなく好きだ、という葛藤に対して、ナフィーシーはとてもすぐれたひとつの答えを示してくれているので引用する。

あらゆる優れた芸術作品は祝福であり、人生における裏切り、恐怖、不義に対する抵抗の行為である。

(中略)

形式の美と完璧が、主題の醜悪と陳腐に反逆する。だからこそ私たちは『ボヴァリー夫人』を愛してエンマのために涙を流し、無作法で空想的で反抗的な孤児のヒロインのために胸を傷めつつ『ロリータ』をむさぼり読むのだ。

 

 

3. 1973年のピンボール(再読)

ちょっと村上春樹が多いけど、勘弁してほしい。私は春樹がけっこう好きなのだ...。

とくに、この「1973年のピンボール」と前作「風の歌を聴け」はとても良いですね。私は、たとえば「ノルウェイの森」や「羊をめぐる冒険」を読んで「うぇ、ぺっぺっ、好きじゃねえや」と思った人にこそ、この二作品を読んでほしいですね。春樹が嫌いかどうかはこの二作を読んでから決めても遅くないと思う。

猫の手を潰す必要なんて何処にもない。とてもおとなしい猫だし、悪いことなんて何もしやしないんだ。それに猫の手を潰したからって誰が得するわけでもない。無意味だし、ひどすぎる。でもね、世の中にはそんな風な理由もない悪意が山とあるんだよ。あたしにも理解できない、あんたにも理解できない。でもそれは確かに存在しているんだ。取り囲まれてるって言ったっていいかもしれないね。

こういうことです。

そういう、「無意味でひどいこと」が溢れている世界で、どう生きるかということ。

 

 

4. スタイルズ荘の怪事件

この本がベストに入ってくることには、私がこれを読んだシチュエーションも大きく関係している。

私の地元はとてものどかな、とても緑あふれた、ちょっとした山なんかもあるいわゆる田舎なのだけど。その田舎にある、ある友達に言わせればまるで「シルバニアファミリーの家」みたいな元自分の家...今は両親が二人で暮らしているおうちのウッドデッキに座り、晩夏の空気の中で手にとった。

クリスティの描く世界、空気感は、こういうちょっとした田舎で読むのがとても似合うと思う。物語の世界にどっぷり浸かるような気持ちで読み進めていった。


19世紀終わり~20世紀初頭のイギリスの空気感と、魅力的な登場人物の織りなす人間模様が楽しい。

 

 

5.  黒猫/モルグ街の殺人(光文社古典新訳文庫)

短編集。「アモンティリヤードの樽」と「ウィリアム・ウィルソン」がゴシックな雰囲気でお気に入りです。

 

 

6. ガールズレビュー ステイ

突然傾向を変えてきたな!? とお思いでしょうか。

そうです、ちょうど昨年(2022年)の12月に、ずっと読みたいと思っていた「大人だって読みたい、少女小説ガイド」をついに読んでですね。そのガイドに載っていた中でちょっとでもピンときたものを読みあさっているのですが、この「ガールズレビュー ステイ」はそのうちでも特にツボでした。

一応ジャンルとしてはミステリのはずなので、2022年はなんとなく流れとしては下半期になって突如ミステリづいてきた感じですね。

ミステリなのはそれはそうなのですが、この作品はちょっと味つけが普通とは違っている。結末のどんでん返しはすさまじい。ものすごいスケールで裏社会というのか、陰謀的な流れにつきすすんでいく(陰謀論系ではないので安心してください)。伝奇にもちょっと雰囲気は近いのかもしれない。あまり読んだことないから分からないけど。

 

 

7. ルピナス探偵団の当惑

こちらも同上の「少女小説ガイド」からピックアップした作品。ホワイダニット系のミステリ。

独特の台詞回しやかけ合いが楽しい。だけじゃなく、特にエピソード3の「大女優の右手」では結末に「やられた!!!」も持ってきてくれており、ミステリの醍醐味である"驚き"を存分に味わうことができました。

巷では「憂愁」が人気なのかなあとなんとなく見ていると感じますが、私は圧倒的に「当惑」派ですね。

津原氏の訃報で、続きが読めなくなってしまったのがとても残念です。

 

 

 

番外編・マンガベスト

本は結局お気に入りを10冊は挙げることができず。まあそもそも読んでいる冊数があまりに少ないので仕方がない。わりと2022年は、映画を見るほうに力を入れていた気がします。(次の記事で映画ベスト10をやろうと思っていますが、そっちは15作あり)

少々ながらマンガも読んだので、おまけとしてマンガベスト4をば。(読んだ順です)

 

1. きみはペット

ちょうど私生活でもいろいろあって、いわゆる「恋愛」ではないけれど一対一の特別な関係を描いた作品ってなんかないかなあ...と探していたときに出会った作品。なるほど、ペットか! そういうテがあったか 笑

 

と、まあちょっとイロモノっぽいタイトルではあるんですけど、この時代だと (というかいまでも一般的な場合そうなんでうかね) 「恋人」 だとどうしても女が合わせざるを得ない。対等でない関係を受け入れざるを得ない。そういう側面ってやっぱりあると思っているんですが。そういうところから「ペット」 というあらたな(?)関係性が生まれてくるのです。

「女が従属するって関係はちょっとなあ。もう少し違った男女関係が見たいな」と思っている方にとてもおすすめです。

 

 

2. まじめな会社員

はい、出ました、ドーン。個人的にはこれがベストオブベストでもいいです。(番外なのに)

「やっぱり何者にもなれなかったお前たちに告げる」ですよ。

なんとなく好きな「趣味」はあるけど、仕事にするほどの覚悟はないし。そうやって「これだ」 ってものがないから悩んでいる。でもいまあるものに満足はしてない...。そういう主人公が、東京で燻ったりコロナでてんやわんやになったり、地元に戻ってみたり、そういう紆余曲折をへて、「それでもなんとか、やっていく」。そういう話です。

 

 

3. 宝石の国

まだ連載終了していないので「読んだ!!」と言ってしまっていいのかはちょっとあれなのですが。

こういう雰囲気、私は好きですね...(もう3年も前から「好きそう」とは言われていたものの、なかなか読めていなかった...A美さん、やっぱり私これ好きでしたよ)

誰か一人に感情移入しながら読むというよりは、ある一つの世界、箱庭をじーっと眺めている感覚。

 

 

4. ひとつば

パッと見恋愛漫画っぽく見えますかね。ちがいます。これは、「業」の話です!!! 

一巻第一話、これがもう全てですね!!

みなさんは、「ひとつばな」 という花を知っていますか? それは人によって、夢だったり、単純に「好きなもの」だったり、様々ですが...一旦それが咲いてしまうと、地位も名誉も、常識すら捨て去って、その花を追い続けてしまう..."呪いの花"と呼ばれています。

ある一つの夢、欲望、理想、そういったものにとりつかれたキャラクターを愛している方はぜひ。(ボンドルドとかね...宇佐美時重とかね...マユリとかね...(私の推したち

 

 

総括

全体的に、今年はあんまり本は読まなかったなあという印象。漫画もそんなに読んでない。いや、もともと小さいころちょっと読んでいたからなんとなく読書が好きだなあというアイデンティティがあるだけで、読書量はそんなに多くない方だったんですよね。2023年が異常な勢いってだけで...
前半は今まで読んでいた作家や作品をさらっていた感じで、後半は突如ミステリに目覚めました。今もそのままミステリを読みまくってます。

漫画を含めるとベストオブベストはやっぱり「まじめな会社員」でした。私には珍しく連載をずっと追っていたのもあり、時代をよく投影している作品でもあるため、まさに「2022年読んだ!!」という印象です。

さて、今年もまた良い本に出会えるといいな。2023年ベストは、月一作品くらい出てくるとなんとなく嬉しい。という目標でまくまく読んでいきます。